2011-03-21

主張:巨大地震に対する新聞社の対応

東北地方を中心に甚大な被害がでた巨大地震は、近年まれにみる大惨事を招いた上、たび重なる余震への恐怖、津波による広範囲での損害、そして原子力発電所の爆発による放射線被害をもたらしている。国がこのような未曾有の危機に直面した直後の新聞社各社のネット対応の貧弱さは、根本的なメディアとしてネット戦略の欠如と覚悟のなさを象徴している。

平時より、日本のメディア各社のネット戦略の弱さは、海外のサイトと比較すれば一目瞭然だ。読売が、ソーシャルメディアを通して記事の共有を促しはじめたのは、専用のボタンを設けたつい最近のことである。海外の新聞社のサイトは、読者の興味の持ちそうな記事を自動的に選びだす機能や、より優れた検索機能、各種プラットフォーム間での情報提供が徹底されている。ウォールストリートジャーナルが、ネット上での有料コンテンツ提供に成功している裏には、このような積極的なネット戦略の成果が伺える。

もともと貧弱な方法でしかコンテンツを提供できていなかった日本の新聞社各社は、巨大地震によって、さらにそのITへの弱さを露呈することになった。ある有名新聞社のサイトでは、地震に関するあらゆる速報を、通常のウェブサイトのレイアウトを維持したまま、各ページの上に新たな枠を設けることによって提供していた。地震情報を集約した専用のコラムが設けられたのは、地震が発生したからゆうに十数時間が経ってからだった。基本的に「記事」の形式でしか情報が提供できないため、刻々と発覚しつつあった地震に関する詳細な情報も、国内のテレビや、あまりに皮肉なことに、海外の新聞社がブログによる速報よりも、遅れることになった。このように、第一に、サイトの形式やネットの運用による拘束によって、情報が提供されるまで時間がかかった上、ほかのメディアに比較して貧弱な印象を与えた。

第二に、巨大地震の発生によって、平時と根本的に異なる対応が必要であったにも関わらず、新聞社各社は、インターネットの特性をうまく生かすことができていなかった。これらの会社は、回線の混雑が明らかであったにも関わらず、情報をたとえば、簡易な文章形式によって提供しようとせず、地震が展開されるさなかにも、必要最低限の情報に加えて、さまざまな不必要なページの装飾や、多くの電子情報が必要とされる画像形式の広告を掲載しつづけた。たとえば、被災地付近で、携帯電話でもって情報にアクセスしようとしていた人が、このようにして生じた不必要な回線の混雑によって必要な情報にたどり着けていなかったならば、これらの新聞社は、ある種の罪を犯したとまで断言できるであろう。

今回の巨大地震を教訓に、新聞社各社は、そのネット戦略を見直すべきであろう。とくに、記事形式以外で情報を提供するためのポータルの開設や、非常時に使用できる簡易サイトなどの準備は、一刻も早く行われるべきだ。

(文責:pitot-tube / 2011.3.21)

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